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ネガティブ感情にもよいところはある

  「あれ、今日はなんか予定なかったっけ」と思い、ヒヤッとしながら手帳を確認することがあります。たいてい何もないんですけど、ヒヤッとするのって心地悪いです。だから、繰り返さないよう、しばらくはこまめに手帳をみるようになります。ヒヤッとが「手帳をみる」という行為の学習を助けてくれるのだと思います。

 ヒヤッとをはじめとするネガティブな感覚・感情は、進化の過程で人の生存や安全を確保するための警告装置のような役割をはたしてきたといわれます。たとえ ば、怒りは身の危険、不安は将来の危機、落ち込みは過剰な頑張りなどを自分自身に教えてくれます。そのサインがあることで、闘う−逃げる、備える −避ける、やめる−控えるといったように対処できるわけです。

 ネガティブ感情は記憶を強める働きもあります。東日本大震災の当日なにをしていたか覚えている人は多いと思います。強い感情体験が、当日の記憶を強化しているからです。こういった記憶をフラッシュバルブ記憶といいます。

 もちろん、ネガティブな記憶はずっと残るわけではありません。時間が経つにつれて、あまり思い出さなくなっていきます。しかし、発達障がいの中には、ネガティブな記憶が非常に残りやすい人もいます。記憶と感情をつかさどる大脳辺縁系とよばれる部分になんらかの機能障害があるため、といわれています。ネガティブな記憶が残り続けると、悲観、自己否定、対人恐怖などにつながる場合があります。

 発達障がいに限らず、過剰なネガティブはあまりよいことではないので、調整が必要です。調整には、ネガティブとは無縁に思える楽観的な人の特徴がヒントとなります。セガストロームという心理学者が興味深い実験をしています。その実験から、悲観的な人と楽観的な人はネガティブな情報の認識には大差ないものの、ポジティブな情報の認識が全く違うことがわかりました。悲観的な人はポジティブな情報を全く認識しません。対して、楽観的な人は、ネガティブな情報もそれなりに認識しつつ、ポジティブな情報をそれよりもたくさん認識します。

 ネガティブ感情からうまれる記憶とのつき合い方のヒントは、そこに本当は存在しているはずのポジティブな情報にどのくらい注意を払えるか、という 点にありそうです。のど元過ぎれば熱さ忘れることもありますよね。たとえば、二日酔いで「二度とあんなに飲まない」と後悔したのに、また飲みにいくみたいな。みんなで飲んで楽 しく過ごした記憶が、過剰なネガティブを抑えているのかもしれません。また、生まれつき楽観的な人もいますが、後から楽観的になることも可能といわれています。就労支援の場でも、最初はネガティブ一辺倒の人が多い印象です。そこからプログラムを通して、少しずつポジティブの認識を増やしていきます。そうすると、楽観的まではいきませんが、過度のネガティブに振り回されるような状態はずいぶんマシになるな、と感じています。

 ストレスの元凶のようにもいわれなにかと邪魔者扱いされるネガティブですが、その中にポジティブな学びも見つけ、過剰を抑えつつ、上手くつきあっていきたいものです。


参考にした文献
・感情心理学入門 大平英樹編 有斐閣
・大人の生活完全ガイド―アスペルガー症候群 辻井正次ら著 保健同人社
・幸せをよぶ法則―楽観性のポジティブ心理学  S・セガストローム著 星和書店

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