多重知能理論(MI)の魅力:1

mi発達障がいの支援では、強みや長所をみつけ、それを伸ばすことが基本方針となります。しかし、支援を始めたころ「長所を探す」ということにすごく困った思い出があります。そもそもなにが長所になるのか、わからなかったからです。そんなときにであったのが、多重知能理論(Multiple Intelligences:MI)でした。

いろいろな「頭が良い」

MIは、人間の知能を説明する理論で、知能を7〜8つのカテゴリにわけて考えます。提唱者のガードナーは、それまで主流だった「人間の知能は一つだけ。知能が高ければなんでも上手にやるし、低ければなんでも上手にやれない」という考え方(やや乱暴にまとめました)に対して、「そうじゃなくて、人間の知能はもっと多様なんじゃないか」という立場をとりました。

 言語的知能  :話言葉や書き言葉など、言葉を中心に使う能力
 論理数学的知能:分析、予測、計算などを使う能力
 空間的知能  :映像や空間のイメージなどを使う能力
 身体運動的知能:身体全体や指先などを使う能力
 音楽的知能  :音程、リズム、フレーズなどを使う能力
 対人的知能  :人の感情や意図を理解し交流する能力
 内省的知能  :自分の特徴や傾向を理解し制御する能力

従来の考え方だと、知能が高い人は多くの場合学校の勉強ができる人というイメージです。頭がいいといわれるのもそういう人でした。そもそも知能測定の起源は、「学校の勉強についていけない子どもを見つけ、適切な支援をしよう」というところにあったといわれています。なので、学校の勉強についていく能力があるかどうかが知能の高い低いの分かれ目になります。一方、ガードナーは知能を「その文化のなかで価値のある問題を解決したり、なにかを創造するのに役立つ能力」と考えました。たとえば、オリンピックでメダルをとることや、人の心を音楽で和ませることも、知能が発揮された結果、というふうに考えるわけです。そして、その背景に、身体運動感覚知能や音楽的知能が働いている、と想定しました。そうすると、運動ができる人、絵が描ける人、楽器ができる人なども、それぞれ頭がよいということになります。このように知能の意味を、「言語、数学、空間認識などの一部の能力」から、「脳を使ってやるすべての活動」にまで拡げたという点で、MIは画期的だったと思います。

MIの考え方は、発達障がいの方の強みや長所をみつけるとき、とても有効な枠組みになるな、と感じています。たとえば、対人的知能はあまり発揮されないが、内省的知能は発揮されやすく、ここの部分を伸ばしていけば、もっと成長してくれそうだ、といった具合です。空間的知能がよく使われていそうな人に、その特徴を活かし、「メモを取ったり話を整理するときに、図や絵にしてみてください」と提案し、それを取り入れ、理解が深まることもあります。

チームビルディングにMIを使ったり、指導育成対象の特徴把握に活用することもあります。普段はあまり知ることのない意外な側面がわかったり、そこに共通点が見つかることがよくあり、大変好評です。

MIは良くも悪くものざっくりしていて、メリットもデメリットもあるなぁと感じています。実際どう活用すればいいのっていう部分は、結構難しいと思っています。これだ、というものはなく、ずっと試行錯誤しています。その点については次回。


参考にした文献
・MI:個性を生かす多重知能理論 ハワード・ガードナー著 新曜社
・発達障害の子どもたち 山崎晃資著 講談社
・実践知 金井壽宏/楠見孝編 有斐閣