習慣をデザインする

3steps
毎朝ランニングするといったポジティブな習慣から、健康に悪影響を与えそうな習慣まで、さまざまな習慣を持っている人がいます。習慣の魅力の一つは、いったんそうしてしまえばその後はあまり意志の力を使わずに楽にできるようになることです。ダイエットやトレーニングなど、習慣化してしまえば楽ですね。他にもビジネス場面で求められるいろいろなスキルから、ストレスマネジメントのような精神的健康を維持増進するためのものまで、習慣にすることでより効果が発揮されるものは多くあります。でも、その「いったん習慣化する」が大変なわけです。そこで今回は、いろいろ提案されている習慣化の方法の中から、「シンプルで小さなステップ」をひたすら強調したBJ・フォッグ(スタンフォード大学教授)の方法をご紹介し、習慣化について考えてみたいと思います。

シンプルさが行動を変える

「毎日夕食を食べ終わった後、腕立てを1回やる」。これは、フォッグが提案する方法でデザインされた習慣の一例です(彼は習慣や行動を作ることをデザインと呼んでいます)。フォッグが最も強調するのは「シンプルで小さい行動を習慣化のターゲットとすること」です。でも、こんな些細なことを習慣にして意味があるのでしょうか?

こういった小さなターゲット行動の意味は、以下の「習慣化の3ステップ」スライドで説明されています。

1.小さな習慣から始める:電化製品同様、人間の行動も初期消費電力の大きさが、一番の課題となります。始めることがなによりも大変です。小さい行動ほど、始めるのも続けるのも簡単です。やる気頼らず、そこを簡単にしましょう、ということです。

2.いま既にやっていることとくっつける:新しい行動は、何もないところにポコンと入るわけではなく、私たちが生活でやっているさまざまな習慣の中に入るわけです。なので、たとえば「夕食の食器を片付けた後」というように、既にやっていることとくっつけた方が、初期電力も少なくて済みます。いわば他の行動の勢いを借りるわけです。

3.サイクルをつくって自動化する:ある行動をある場面で繰り返していくと、次第にその行動は意識しなくても自動的にできるようになります。自動化の前後で楽さがどのくらい違うかは、左手で歯磨きをしてみた後、右手でやってみるとよくわかります(左利きの方は逆で)。

首長族の方は、小さい頃に、小さな首輪をはめ、それが苦しくなくなったらもう一つはめていき、徐々に首が長くなるよう拡張していくそうです。フォッグの習慣デザインはこの過程と似ていて、小さく始めること、その習慣を継続すること、大きくしていくこと、この3点を繰り返して、習慣を作っていきます。首を長くするのは気が遠くなるくらい時間がかかりそうですが、ランニングや深呼吸などなら、もっと短い時間でできるかもしれません。

環境とかやる気とか方向性とか

小さくてシンプルな目標を立てる以外にも、下準備をすることで、ターゲット行動を小さくすることができます。たとえば、早朝のランニングを習慣化している人の中には、走れる服装で寝る人もいます。走る前の手間や「着替えなきゃ」という意思決定を省くわけです。心理学者のS・エイカーは、20秒以内で始められるように準備してくことが効果的だと述べています。

反対に、いまやっている行動をやめる場合、できるだけその行動をするのに手間がかかるようにします。私は昨年禁煙したのですが、灰皿やライターを全部捨て、現金を持たないなど、タバコを吸うのにすごく手間のかかる状況を作りました(よくやられる方法かもしれません)。このように、始めたい/始めさせたい行動にはできるだけ手間がかからないように、一方でやめたい/やめさせたい行動にはできるだけ手間がかかるようにアレンジすると効果的です。

ちなみに、フォッグの方法では、やる気を重視しません。もちろん、困難な目標への挑戦にはやる気は必要です。そのやる気をつかさどる淡蒼球(たんそうきゅう)と呼ばれる脳の領域は、身体を動かすことによってはじめて活性化するそうです。したがって、やる気を出そうと思うのであれば、むしろ些細でもかまわないからなにか行動を始めたほうがよいわけです。

行動を始められたとして、どのくらい続けるとそれが習慣になるのでしょうか。よく言われるのは「21日間続ける」というものです。フォッグは「特に21日に妥当性はない。1ヶ月だって2週間だっていい」と述べていますが、だいたいそのくらいが目安となりそうです。

また、定着→拡張というステップで習慣作りが進みますが、どういう方向に拡張していくとよいかは、フォッグはふれていません。しかし、最初にある程度大きな目標を立てることも大事だと思われます。よい目標についてもいろいろな研究があります。それはまた別の機会に。

とにかくシンプルに小さく始めること、それが苦なくできるようになるまで続けること、その後、質や量をあげていくこと、これらの点が、習慣デザインのポイントとなります。「このくらいやらなければやったことにはならない」ではなく、「このくらいならできる」から始めていくことで、そして「またできなかった」ではなく「できるサイズに目標を変える」ことで、もっと習慣を作りやすくなっていくはずです。


参考にした論文、文献
・実験心理学が教える人を動かすテクノロジ  BJ・フォッグ著 日経BP社
・幸福優位7つの法則 ショーン・エイカー著 徳間書店

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