タグ別アーカイブ: ゲーミフィケーション

goal

自分を数字にする

毎年、1月1日に「この1年はこんなふうにしたい」というものをいくつか箇条書きで書き出してみることにしています。大半は絵に描いたもちにおわりますが、中には達成できるものもあります。達成できる目標は、当たり前かもしれませんが、「達成できたかどうか」がわかる目標です。これは目標を設定するときに、すごく大事な視点だと思います。

自分の行動を数字にして把握する

「今年はいい人になる」。こういった目標を立てた場合、たぶん、「達成できたな」と判断することは難しいでしょう。一方、「1ヶ月に10人をなにかしら助ける」だったら、前者よりも達成できたかが判断しやすいでしょう。このように自分のやることを数字にして把握してみると、達成したか判断しやすくなります。こういう取り組みを“自己数量化”といいます。以前ブログでも取り上げたゲーミフィケーションでは、この自己数量化が巧みに使われています(ステージの難易度とか、自分のレベルなど)。

また、目標達成では、「いまどこにいるのか」と「あとどのくらいか」がわかるかどうかも重要といわれています。たとえば、山登りでは、登山者は「標高何メートル」や「何合目」といった数字をみて、それら2つを把握するようにするのではないでしょうか。目標達成でも、中間目標をおきます。この際、自分の行動が数量化できると、「いまどこか」、「あとどのくらいか」が客観的にわかりやすくなります。

できたかどうかわかる目標

就労支援の場面では、「どうやってできたって判断するんだろう」という目標を立てている人と出会います。こういう目標に数字をいれたり、「いまどこか」「あとどのくらいか」が分かるような中間目標を入れると、ずいぶん目標達成スキルが上達していくな、と感じます。

今年の目標は、数字を把握できて、達成できそうなものも立ててみてはどうでしょう。日常の中で数字が積上っていく楽しさが、やる気をさらに引き出してくれるかもしれません。ただ、いちいち数字で把握してたらつかれちゃう場合もあるので、ほどほどに。


参考にした文献
・WILLPOWER. R.F.Baumeister & J.TIERNEY. PENGUIN BOOKS
・自己調整学習 自己調整学習研究会編 北大路書房

習慣をデザインする

3steps
毎朝ランニングするといったポジティブな習慣から、健康に悪影響を与えそうな習慣まで、さまざまな習慣を持っている人がいます。習慣の魅力の一つは、いったんそうしてしまえばその後はあまり意志の力を使わずに楽にできるようになることです。ダイエットやトレーニングなど、習慣化してしまえば楽ですね。他にもビジネス場面で求められるいろいろなスキルから、ストレスマネジメントのような精神的健康を維持増進するためのものまで、習慣にすることでより効果が発揮されるものは多くあります。でも、その「いったん習慣化する」が大変なわけです。そこで今回は、いろいろ提案されている習慣化の方法の中から、「シンプルで小さなステップ」をひたすら強調したBJ・フォッグ(スタンフォード大学教授)の方法をご紹介し、習慣化について考えてみたいと思います。

シンプルさが行動を変える

「毎日夕食を食べ終わった後、腕立てを1回やる」。これは、フォッグが提案する方法でデザインされた習慣の一例です(彼は習慣や行動を作ることをデザインと呼んでいます)。フォッグが最も強調するのは「シンプルで小さい行動を習慣化のターゲットとすること」です。でも、こんな些細なことを習慣にして意味があるのでしょうか?

こういった小さなターゲット行動の意味は、以下の「習慣化の3ステップ」スライドで説明されています。

1.小さな習慣から始める:電化製品同様、人間の行動も初期消費電力の大きさが、一番の課題となります。始めることがなによりも大変です。小さい行動ほど、始めるのも続けるのも簡単です。やる気頼らず、そこを簡単にしましょう、ということです。

2.いま既にやっていることとくっつける:新しい行動は、何もないところにポコンと入るわけではなく、私たちが生活でやっているさまざまな習慣の中に入るわけです。なので、たとえば「夕食の食器を片付けた後」というように、既にやっていることとくっつけた方が、初期電力も少なくて済みます。いわば他の行動の勢いを借りるわけです。

3.サイクルをつくって自動化する:ある行動をある場面で繰り返していくと、次第にその行動は意識しなくても自動的にできるようになります。自動化の前後で楽さがどのくらい違うかは、左手で歯磨きをしてみた後、右手でやってみるとよくわかります(左利きの方は逆で)。

首長族の方は、小さい頃に、小さな首輪をはめ、それが苦しくなくなったらもう一つはめていき、徐々に首が長くなるよう拡張していくそうです。フォッグの習慣デザインはこの過程と似ていて、小さく始めること、その習慣を継続すること、大きくしていくこと、この3点を繰り返して、習慣を作っていきます。首を長くするのは気が遠くなるくらい時間がかかりそうですが、ランニングや深呼吸などなら、もっと短い時間でできるかもしれません。

環境とかやる気とか方向性とか

小さくてシンプルな目標を立てる以外にも、下準備をすることで、ターゲット行動を小さくすることができます。たとえば、早朝のランニングを習慣化している人の中には、走れる服装で寝る人もいます。走る前の手間や「着替えなきゃ」という意思決定を省くわけです。心理学者のS・エイカーは、20秒以内で始められるように準備してくことが効果的だと述べています。

反対に、いまやっている行動をやめる場合、できるだけその行動をするのに手間がかかるようにします。私は昨年禁煙したのですが、灰皿やライターを全部捨て、現金を持たないなど、タバコを吸うのにすごく手間のかかる状況を作りました(よくやられる方法かもしれません)。このように、始めたい/始めさせたい行動にはできるだけ手間がかからないように、一方でやめたい/やめさせたい行動にはできるだけ手間がかかるようにアレンジすると効果的です。

ちなみに、フォッグの方法では、やる気を重視しません。もちろん、困難な目標への挑戦にはやる気は必要です。そのやる気をつかさどる淡蒼球(たんそうきゅう)と呼ばれる脳の領域は、身体を動かすことによってはじめて活性化するそうです。したがって、やる気を出そうと思うのであれば、むしろ些細でもかまわないからなにか行動を始めたほうがよいわけです。

行動を始められたとして、どのくらい続けるとそれが習慣になるのでしょうか。よく言われるのは「21日間続ける」というものです。フォッグは「特に21日に妥当性はない。1ヶ月だって2週間だっていい」と述べていますが、だいたいそのくらいが目安となりそうです。

また、定着→拡張というステップで習慣作りが進みますが、どういう方向に拡張していくとよいかは、フォッグはふれていません。しかし、最初にある程度大きな目標を立てることも大事だと思われます。よい目標についてもいろいろな研究があります。それはまた別の機会に。

とにかくシンプルに小さく始めること、それが苦なくできるようになるまで続けること、その後、質や量をあげていくこと、これらの点が、習慣デザインのポイントとなります。「このくらいやらなければやったことにはならない」ではなく、「このくらいならできる」から始めていくことで、そして「またできなかった」ではなく「できるサイズに目標を変える」ことで、もっと習慣を作りやすくなっていくはずです。


参考にした論文、文献
・実験心理学が教える人を動かすテクノロジ  BJ・フォッグ著 日経BP社
・幸福優位7つの法則 ショーン・エイカー著 徳間書店

生活をゲームする

大人になってもTVゲームを楽しんでいる人はたくさんいるようです。ぼくもその1人で、今でも、1日1時間くらいやることがあります。半分は仕事、半分は楽しみのためです。例えば、一見無駄なことに人のエネルギーを注ぎ続けさせるのはどんな仕組みなのかなど、対人支援に役立つ知恵があちこちにうまっています。なので、仕事のアイディアが得られたりします。

最近では、ゲームが単なる暇つぶしや現実逃避以上の力を持つものと考え、現実の世界をより豊かにすることを目指している人たちがいます。AR(現実代替)とよばれる分野のゲームです。ゲームデザイナーのジェイン・マクゴニガルは、ARゲームとは「反逃避主義者のゲームであり、人類が直面している喫緊の課題に対する新しい解決策を生み出そうとするもの」と考えています。ずいぶん壮大ですが、ゲームが現実をよくする力があるという考えもあるということでしょう。現実をゲームのように楽しみ、ついでに問題も解決する。そのための枠組みの1例として、全てゲームに共通する以下の4つの特徴をあげています。
  1.ゴールがある(ボスを倒すなど)
  2.ルールがある(成功までのやり方がある程度はっきりしている)
  3.フィードバックがわかりやすい(得点やレベルなど)
  4.自発的な参加(どの課題をやるか選べる)
この4つのバランスが上手くとれていると、よいゲームといえそうです。そして、人の行動を引き出し、続けさせる仕組みともなるのです。例えば大人気のモンスターハンターはこの4つが見事にあてはまります。

考えてみると、学校の勉強や仕事は、この4つと全て逆なことが多い気がします。だとすれば、もしゲームをやめさせたいなら、”仕事化”してみるといいかもしれません。例えば、1時間以内にボスを倒せないならご飯抜きなどの条件をこちらから出してみるのはどうでしょう。そうすると、そのうちやる気をなくしていくかもしれません。ムキになってやる気をだすかもしれませんが。。。

ぼくが働いている発達障がいのある方への就労支援機関でも、ゲームの要素や仕組みを活用しています。例えば、プログラム内で
  出席するたびに昇進(例:平社員→係長→課長)
  新しいことを覚えたりできたりしたら、ポイントを加算
  一定のポイントに達したら、レベルアップ
などの仕組みを取り入れています。これらは、一見子どもだましのように思えます。ただその一方で、支援機関の利用者にはゲームになじみ深い方々が多いため、こういった仕組みでモチベーションが高まったり、成長が実感できたりもするようです。他にも、例えば成長のプロセスや小さな目標設定の大切さを伝えるときに、「いきなりバラモスと戦っても絶対に勝てないですよね。まずはスライムからです」といったたとえ話をよくつかいます。一般的にはたとえ話を理解しづらいといわれる発達障がいの方ですが、自分が知っているものをベースにしたたとえ話は、とてもよく理解してくれると感じます。

また、引きこもりの元凶のようにいわれるゲームですが、ゲームで自分が成長した、と感じる当事者の方々もいるようです。「ネットゲームがあったおかげで、チームワークの大切さを学べた」「人とコミュニケーションをする、いい練習になった」などの感想を耳にします。もちろん全員がそう感じるわけではないでしょう。現実逃避の面があるもの確かです。しかし、社会性やスキル学習を促すポテンシャルを、ゲームが持っているともいえるのではないでしょうか。

もっとも、ゲームには中毒性などの問題があります。その中毒性がゆえに、「ゲームはけしからん」となっている面もあります。ゲームにかぎらず、やりすぎればさまざまな問題が生じます。健康によいとされるスポーツでも、やりすぎればスポーツ障害につながります。では、ゲームを何時間以上やるとよくないのか、明確な科学的基準はないようですが、下記のラインは参考になると思います。
  川島教授(脳トレの監修者)は、1日1時間に制限
  ゲーマーが後悔する境目は、週20時間以上

実際にゲームそのものが悪いという科学的データは少ないようです(例えばゲーム脳についての批判)。その一方で、ゲームがもつプラスの影響についてはいろいろなデータが示されています。このテーマについては、そのうち取り扱おうと思います。

ゲームに好意的であれ否定的であれ、ゲームの存在は多くの人にとって無視できない影響をもっていると思います。であれば、それとどうつき合っていくか、どうかかわると我々の生活をより豊かにできるのかを考えていくのも面白いな、と感じます。

見出しと内容がかなりずれましたが、ゲームのアイディアを生活のなかにいかしてみると、少しだけ生活が楽しく豊かになりそうです。ぼくの場合は、やりたくないことをやるときにポイントがたまるという設定にし、一定以上たまるとレベルアップすると決めてます。はたからみるとちょっと痛いですかね。別にレベルアップしても特にごほうびとかはありませんが、なんとなく、充実した気持ちになります。そんなことの積み重ねがちょっと豊かな生活につながりそうです。


参考にした文献やサイト
・幸せな未来は「ゲーム」が創る  ジェイン・マクゴニガル著 早川書房
・「おもしろい」のゲームデザイン ラフ・コスター著     オライリー・ジャパン
・ゲーミフィケーション      井上 明人著       NHK出版
・ゲームの仕組みを心理学的視点から分析したMichael Wu, Ph.D. の記事(英語です)