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多重知能理論(MI)の魅了:2

mi研修などでMIを実施すると、「得意なMIはわかったけど、どういかせばいいのか」という点に多くの方が疑問をもたれます。そこで、今回はMI理論が実際の支援などでどのように活用できるのか、という点について書いてみたいと思います。あくまで試行錯誤している段階で、明確なエビデンスがあるわけではありませんが、なにかの参考になれば嬉しいです。

手探りな活用方法

いまのところ、3つの目的で活用方法を実践しています。

1つ目は、自己肯定を高めることです。支援対象者が持つ自己イメージを「いいところなんて何もない」から「いいところもあるかも」へと更新する役割を期待しています。自己否定感の強い方が多い就労支援では、特にこの効果をねらって実施しています。この場合、「で?どうすればいいの?」はあまり考慮にいれません。

2つ目は問題解決のツールを増やすことです。自分が目標達成するために、どんな手段を組み合わせていくとよいのかを探るヒントとして活用します。例えば、
 言語:日記を書いてそれを分析するとか、口に出してみるとか。
 論理:意識的に因果関係を分析してみるとか。
 空間:考えるときに、文字よりも図式化や絵の描写を多様してみるとか。
自然にやっていることを意識化すると、工夫や努力を投じる対象となりやすくなります。なんとなくうまくいくときには、意識されていないだけで自分の得意なMIが発揮されているのかもしれません。それらを意識化し、手段として意図的につかうことで、「なんとなく」が、「こうすれば」に変わっていくことを期待します。

3つ目は、チームビルディングです。初めて会った人やこれから一緒に仕事をする人との共通点や、その人の得意な点を知るきっかけになります。たとえば、すごくゴツくて強面な人と、きゃしゃで柔和そうな人が、MIのワークでお互いに実は昔ピアノを習っていた、という共通点がみつかり、意気投合するようなことがあったりします。

ちなみに、提唱者のガードナーは、MIをこういった「問題解決の道具的に」使うことはあまり好ましくないと考えている部分があるようです。でも、どう使うか?は、強みを活かすとか伸ばすという視点からは、大事な取り組みだと思います。

MIにはいろいろと批判もある

そもそも、IQと違い、客観的に測定する方法がありません。ガードナー自身がそういった測定に反対の立場をとっており、基本的には観察や面接から特徴を探ることになります。こういった点が、客観的な測定を大事にする立場の人たちからはものすごく批判を受けているようです。現場の視点からみても、測れるにこしたことはありません。そこで、海外のさまざまな実践家は、独自にチェックリストなどを作成し、手がかりをつかむ工夫をしています。日本でも、大手進学塾がMIの研究者と組んで、生徒の学習スタイルを測定したりしています。批判は他にも、MIのカテゴリがそもそも妥当なの?というものなどがあります。

なんか良さそうだけど、どういいのかはいまいちわかりにくい。そんなところに魅力を感じます。どう活用すればいいのか考えるのに、こちらの関わる余地がたくさんある点も魅力です。みなさんも、自分なりのMI活用方法を考えてみてください。


参考にした文献
・MI:個性を生かす多重知能理論 ハワード・ガードナー著 新曜社
・発達障害の子どもたち 山崎晃資著 講談社
・実践知 金井壽宏/楠見孝編 有斐閣
・MI at 25. Branton Shearer. Teachers College Press.
・MultipleIntelligences in the classroom. Thomas Armstrong. ASCD.
・MultipleIntelligences in practice. Mike Fleetham. Network Continuum Education

多重知能理論(MI)の魅力:1

mi発達障がいの支援では、強みや長所をみつけ、それを伸ばすことが基本方針となります。しかし、支援を始めたころ「長所を探す」ということにすごく困った思い出があります。そもそもなにが長所になるのか、わからなかったからです。そんなときにであったのが、多重知能理論(Multiple Intelligences:MI)でした。

いろいろな「頭が良い」

MIは、人間の知能を説明する理論で、知能を7〜8つのカテゴリにわけて考えます。提唱者のガードナーは、それまで主流だった「人間の知能は一つだけ。知能が高ければなんでも上手にやるし、低ければなんでも上手にやれない」という考え方(やや乱暴にまとめました)に対して、「そうじゃなくて、人間の知能はもっと多様なんじゃないか」という立場をとりました。

 言語的知能  :話言葉や書き言葉など、言葉を中心に使う能力
 論理数学的知能:分析、予測、計算などを使う能力
 空間的知能  :映像や空間のイメージなどを使う能力
 身体運動的知能:身体全体や指先などを使う能力
 音楽的知能  :音程、リズム、フレーズなどを使う能力
 対人的知能  :人の感情や意図を理解し交流する能力
 内省的知能  :自分の特徴や傾向を理解し制御する能力

従来の考え方だと、知能が高い人は多くの場合学校の勉強ができる人というイメージです。頭がいいといわれるのもそういう人でした。そもそも知能測定の起源は、「学校の勉強についていけない子どもを見つけ、適切な支援をしよう」というところにあったといわれています。なので、学校の勉強についていく能力があるかどうかが知能の高い低いの分かれ目になります。一方、ガードナーは知能を「その文化のなかで価値のある問題を解決したり、なにかを創造するのに役立つ能力」と考えました。たとえば、オリンピックでメダルをとることや、人の心を音楽で和ませることも、知能が発揮された結果、というふうに考えるわけです。そして、その背景に、身体運動感覚知能や音楽的知能が働いている、と想定しました。そうすると、運動ができる人、絵が描ける人、楽器ができる人なども、それぞれ頭がよいということになります。このように知能の意味を、「言語、数学、空間認識などの一部の能力」から、「脳を使ってやるすべての活動」にまで拡げたという点で、MIは画期的だったと思います。

MIの考え方は、発達障がいの方の強みや長所をみつけるとき、とても有効な枠組みになるな、と感じています。たとえば、対人的知能はあまり発揮されないが、内省的知能は発揮されやすく、ここの部分を伸ばしていけば、もっと成長してくれそうだ、といった具合です。空間的知能がよく使われていそうな人に、その特徴を活かし、「メモを取ったり話を整理するときに、図や絵にしてみてください」と提案し、それを取り入れ、理解が深まることもあります。

チームビルディングにMIを使ったり、指導育成対象の特徴把握に活用することもあります。普段はあまり知ることのない意外な側面がわかったり、そこに共通点が見つかることがよくあり、大変好評です。

MIは良くも悪くものざっくりしていて、メリットもデメリットもあるなぁと感じています。実際どう活用すればいいのっていう部分は、結構難しいと思っています。これだ、というものはなく、ずっと試行錯誤しています。その点については次回。


参考にした文献
・MI:個性を生かす多重知能理論 ハワード・ガードナー著 新曜社
・発達障害の子どもたち 山崎晃資著 講談社
・実践知 金井壽宏/楠見孝編 有斐閣

強みを伸ばすには

最近高校の先生向けに強みについて研修をしました。いただいた感想の中に、「強みってどう伸ばせばいいの?」という内容のものがいくつかありました。言われてみれば、見つけるのと比べて伸ばすのって結構難しい印象があります。そこで、今回は「自分や人の強みをどう伸ばすのか」という点について、目的や伸ばす人の状態などの視点をまじえて考えてみます。

そもそもどうなれば「伸びた」ことになるのか?

一応、「こんな状態になるといいね」というものが3つ提示されています(R・ビスワス・ディーナーら)。どれかにあてはまれば、強みが伸びたということになるとされています。
   1.強みを使う頻度が増える
   2.強みについて自信が増す
   3.強みの使われどきや程度が調整される
例えば、「親切心」なら、人に親切にする回数が増える(1)、「自分は人に親切にできる」と自信を持つ(2)、余計な世話をあまり焼かない(3)、というような状態です。伸ばす取り組みでは、このどれかを目指すことになります。一番取り組みやすいのはでしょう。

何を目的に強みを伸ばすのか?

次に、何のために伸ばすのかです。私は、目的をざっくり2つに分けて考えています。
  1.自己評価を高めること:強みに気づく+意識的に「使っている」経験を積む
  2.能力自体を成長させる:厳しいトレーニング(究極の鍛錬:アンダースエリクソン)
で目指すのは、自己否定的な人が「自分にもよいところがあるんだ」という事実に気づき自信を持つためのサポートです。この場合、強みは自己評価のリハビリツールとなり、その人自身の肯定的評価を高めることに役立ちます。一方、2で目指すのは、強みを人と比べても優れているといえるレベルにまで高めることです。こちらの場合、出来ることだけでなく、「不足への絶え間ない集中と改善」(ジョフ・コルヴァン)も大切といわれます。

目的に加え、強みがどの段階のものなのかによっても、最適な伸ばし方は異なると思います。
  A.よちよち歩きステージ:武器になる可能性をもつが、まだ使い慣れていない
  B.日常歩行ステージ  :日常の中でなんらかの役に立つ
  C.競技参加ステージ  :自分の武器として、何らかの社会的成果をあげられる
ここらへんはまだ研究中ですが、目的やステージを見誤ると、むしろ自信を失わせたりするリスクもあるなぁ、と思います。能力はあるが自信がない人が出来上がる背景には、こうした見誤りもあるかもしれません。

就労支援では、私は主に「自己評価を高めることを目指し、よちよち歩きかもしれない人が強みをたくさん使うようになる」取り組み方をしています。出来ることを見つけて増やす、いわば肯定的な関わりが中心となります。歩き始めたばかりの子どもに「なんで背筋をもっと伸ばさないんだ!」と言わないように、出来ていないことの改善はひかえることが多いです(だからといってそのまま放置するわけでもないのですが)。就労支援の利用者には、失敗経験の蓄積から必要以上に自己否定的な方が多い印象です。そのため、むしろ「こんな面は、あなたの強みが使われている」といったことを強調して伝えます。一方、Cステージの人の場合、これだけでは不十分だと思われます。“鍛錬”が必要となるでしょう。

どんな方法で伸ばすのか?

これまでの研究や実践から、いろいろな伸ばす方法が提案されています。2つ紹介します。

VIAプログラム
強みの権威、セリグマンのプログラムです。VIAで見つけた5つの強みのうち1つを選び、1週間その強みをこれまでとは違った形で実行します。強みの活動の例が参考になります。プログラム後6ヶ月経っても、個人の充実感などが高かったそうです。私のプログラムでは、毎日ランダムに1つ強みを選び、その活動の中の1つをやってもらったりします。
バッキンガムの6ステップ
元ギャラップ社のコンサルタント、マーカス・バッキンガムが提唱する「強みを伸ばす」ためのメソッドです。具体的には、「強みを活かす活動」を増やし、「弱みを封じる」よう仕事を組み替えます。そうやって、強みをどんどん仕事に活かしていくと、強みが伸びるし成果もでるよ、ということです。仕事を組み替えること自体が難しそうですが・・・。

冒頭の「どう伸ばせばいいの?」という問いに対して、私は「どんなレベルの強みを持っているかとか、どのくらい自信があるかなどによって変わります。まずは生徒を観察してみてください」とおこたえしました。身もふたもない回答ですが、これが一番大切。よくわからないなら、まずはたくさん強みを使うことを目指し、よちよち歩きから始めるのがよいと思います。そうすることで、「自分には強みなんかない」といっている人が、次第に自分の強みを工夫して、現実の問題を解決していく様を、これまで何度も見てきました。鉄は熱いうちに打て、といいます。まず、熱くすることが大切なわけです。熱くない鉄を打っても、はじかれるか鉄が傷つくかでしょう。熱くするために、まずは肯定的な点を指摘(自覚)し続けることも、一つの手段です。


参考にした論文、文献
・強みの活用についてレビューしたBiswas-Dienerの論文
・究極の鍛錬             J・コルヴァン著  サンマーク出版
・最高の成果を生み出す6つのステップ M・バッキンガム  日本経済新聞出版社
・人を伸ばす力            E・L・デシ  新曜社
・ポジティブサイコロジー       C・ピーターソン著 春秋社
・ポジティブ心理学の展開       堀毛一也編  きょうだい社

強み見つける

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ここ数年、学校やビジネス場面でも“人の強み”に注目が集まっています。研究もかなり増えてきいます。いくつか例をあげると、強みを見つけて使うことで、自己肯定感が高まったり、ストレスに強くなったり、会社の業績が向上したりしやすいそうです。そもそも、自分にも強みがあるのだという認識は、自分の存在を肯定する根拠となります。失敗経験が尾を引き、一歩が踏み出せない若者たちにとっては、それだけでも意味があるかもしれません。では、どうやって強みを見つけたり、伸ばしたりするのでしょうか。今回は、見つける方法ということについて考えてみたいと思います。

品川ではやぶさを見つける?

先日、NHKのバードウォッチング番組を見ていて驚いたのですが、品川にもけっこう野鳥がいて、はやぶさや鷹もいるそうです。ガイドの方が「カラスしかいないと思っていたら絶対にみつかりません。野鳥がいると思って探してください」といっていたのが、印象的でした。強みを見つけるときも基本的には同じだと感じています。「なにか強みがある」という前提で探します。もちろん、「絶対品川にコンドルがいる」と思っても実際にはいないので、なんでもみつかるわけではないでしょうけど。

見つける方法ですが、ざっくり分けると2つあって、強みのチェックリストなどをつかう方法と、様子の観察やヒアリングで得た情報をもとに判断する方法があります。1つ目は、セリグマンたちが開発したVIA(Values In Action)などが有名です。親切心とかユーモアとか、どちらかというと性格っぽい強みを見つけます。2つ目は、大手進学塾などでも取り入れられているガードナーの多重知能理論(Multiple Intelligences)などが有名です。論理性や映像性、言語性などがあり、得意な理解方法、表現方法を見つけます。私が実施している就労準備向けのプログラムでは、これらの方法に加えて、いろいろな専門家が提案している“強みの条件”(ピーターソンなど)を基準に、「この人の強みはなにかな?」と1人1人の強みの素材を探します。その条件をまとめるてみると、大まかに以下の4つとなりそうです。
     1.なんらかの問題解決に役立つ
     2.その人の中での優れている能力
     3.本人にとっては当たり前、無意識に繰り返している
     4.場面や見方によっては欠点になる
どうでしょう?2番目や3番目は、一般的なイメージとはちょっと違うところかなと思います。研修などでこれらの基準を紹介すると、「人と比べるのが強みだと思っていた」といった感想をいただくことがあります。たしかに、一般的には、「人と比べて優れている能力」が強みと思われがちです。しかし、その視点だけでは、これから伸びるかもしれない強みの素材はみつかりにくくなります。それを避けて、少しでも可能性のあるもの探すためには、「その人の中で優れている」という基準が役立ちます。

ラベルか素材か、受入の壁

さて、ここからは日頃感じていることです。まずは強みのイメージについてです。強みに「変わっていくもの」という動的なイメージを持つことが、発見する上で大事だな、と感じています。強みを見つけるときくと、占い的な心理テストなどで「あなたは◯◯タイプです」と出てくるのに近いイメージがあるかもしれません。あなたはこうで、それは今までもこれからも変わりませんよ、というラベルのような感覚。でも、実際に見つけるのは、形のはっきりしない、何に化けるのかもわからない素材のようなもの、という感覚にちかいと思っています。本人も周囲も自覚していなかったり、自覚はあっても使い方が分からなかったりするからです。

次に、見つけた強みを「そうですね」と受け入れられるかについてです。見つける→使うの間に壁があるように感じています。ATフィールドが張られていて、「これは強みかもしれませんよ」というメッセージがなかなか入っていかない。「自分に強みなんかない」とか「バカをみたくない」といった思いが、その裏側にありそうです。そこで、プログラムでは立場の違う何人もの人が、同じ強みを、継続して伝え続ける、という試みをしています。そうすることで、すこしずつ染みわたれば、というのがねらいです。また、プログラムの参加者同士が、お互いに強みを探して伝え合う方法もあり、その方が「本当っぽい」と感じられる側面もあるようです。ここらへんは押し付けにならないよう試行錯誤かな、と思っています。

今回は見つけ方に焦点を当てて考えました。他にも探す人の能力感とか自己評価のあり方とか、いろいろな要素が強みの発見には影響します。また、「強み」という表現自体、もっと和風なものだったらいいのに、とか思うこともあります。

強みを発見したら、次にそれらを使って伸ばしていくということになります。いろいろな考えややり方がある中で、どう強みを使うのか、伸ばすのか。そこらへんの話を、来月できればと思います。


参考にした文献、サイト、論文
・ポジティブサイコロジー        クリストファー・ピーターソン著 春秋社
・MI:個性を生かす多重知能の理論   ハワード・ガードナー著     新曜社
・ポジティブ心理学の展開        堀毛一也編           きょうだい社
・世界でひとつだけの幸せ       マーティン・セリグマン著    アスペクト
・強みのアセスメントをまとめたLisa Sansomの記事(英語です)
・強みの活用についてレビューしたBiswas-Dienerの論文